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不整脈

不整脈とはどんな病気?

不整脈は、心臓の拍動リズムが通常の状態から逸脱し、速くなったり遅くなったり、あるいは不規則な拍動が発生する疾患です。

正常な脈拍は一般的に1分間に50~100回程度で、リズムも一定の間隔で規則的ですが、不整脈が起こるとこのリズムが乱れることがあります。脈拍が遅くなる「徐脈」、速くなる「頻脈」の他、脈が突然途切れたり、早すぎたりと、さまざまなリズムの乱れが特徴です。

不整脈は軽度なものから重篤な合併症を引き起こすものまで多様で、原因や症状も幅広いため、正確な診断と適切な治療が重要です。

重大な合併症リスクが高い心房細動

不整脈の一種である「心房細動」とは、心臓の上部にある心房が小刻みに震えるように不規則に動く状態です。日本では潜在的な患者さんも含めると100万人以上いると推定される一般的な病気です。

心房細動は以下のような特徴があります。

  1. 脈が速く不規則になる頻脈性不整脈です。
  2. 主な症状には動悸、めまい、息切れ、胸部不快感などがありますが、約3割の患者さんは無症状です。
  3. 血液がよどみやすくなり、血栓ができやすくなるため、脳梗塞のリスクが高まります。
  4. 加齢、高血圧、心臓病、飲酒過多などが主な原因とされています。
  5. 発作性(7日以内に自然停止)、持続性(7日以上持続)、長期持続性(1年以上持続)の3種類に分類されます。
  6. 治療には薬物療法とカテーテルアブレーション治療があります。

心房細動は早期発見・早期治療が重要で、適切な管理により脳梗塞などの重大な合併症リスクを低減できます。

近年、不整脈の治療において、特に心房細動に対する新しい治療法「パルスフィールドアブレーション(PFA)」が登場し、患者さんに大きなメリットをもたらしています。PFAは従来の治療法に比べて安全性が高く、治療時間の短縮や効果の向上が期待されており、日本国内でも普及が進んでいます。

不整脈の症状

不整脈の症状は個人差が大きく、場合によっては自覚症状が全くないこともありますが、以下のような症状が一般的に見られます。

動悸・息切れ

心臓が突然激しく拍動し、胸が「ドキドキ」または「ドンドン」と不快に感じられることがあり、特に緊張時や興奮時に感じやすくなります。また、日常的な動作や軽い運動でも息苦しさを感じることがあります。これは心臓が血液を効率的に送り出せないことで、酸素供給が不足するために起こります。

めまい・失神

脳への血流が不安定になると、めまいやふらつきが生じ、重度の場合は意識が遠のく感じや転倒のリスクもあります。また、重度の不整脈では、一時的に脳への血流が止まることで、意識を失い倒れる場合もあります。これは生命に関わる重大な不整脈である可能性が高いため、早急な対応が必要です。

胸の痛みや違和感

心臓が正常に血液を送り出せないために、胸部に圧迫感や痛み、詰まる感じなどが出ることがあります。この症状が頻繁に出現する場合、心疾患が隠れていることがあるため注意が必要です。

脈が飛ぶ感じ

脈が不規則に飛ぶような感覚や、不整脈の発生時に心臓が一瞬止まったような感じがすることもあります。 不整脈による症状は多岐にわたり、心疾患や他の健康問題が隠れていることもあるため、少しでも気になる場合には医療機関での診察が推奨されます。

不整脈の原因

不整脈を引き起こす要因は非常に多岐にわたります。加齢や生活習慣、体質により発症リスクが高まることもありますが、その他にも多くの原因が関係しています。

加齢・生活習慣

年齢とともに心臓の筋肉や電気的システムに変化が生じ、不整脈が発生しやすくなります。加齢は最も一般的なリスク要因のひとつです。また、過度なストレス、過度の飲酒や喫煙、睡眠不足などの生活習慣は心臓の負担を増加させ、不整脈のリスクを高める要因です。特に喫煙は血管や心筋に直接影響を及ぼし、不整脈を引き起こす危険性があります。

高血圧や心臓病

高血圧は心臓にかかる負荷を増大させ、心筋の変性や肥大を引き起こすことがあり、それによって不整脈のリスクが増します。また、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や心不全などの既存の心疾患も原因となります。

甲状腺機能異常

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症や、逆に分泌が不足する甲状腺機能低下症は、心臓の電気的活動に直接影響を与え、不整脈の原因となります。

電解質異常

体内の電解質(特にカリウムやナトリウム)のバランスが崩れると、心臓の電気的活動が乱れやすくなり、不整脈が発生するリスクが高まります。脱水症状や腎臓病もこの原因となります。

不整脈の検査・診断

不整脈の診断には、さまざまな検査が行われます。各検査の特性を理解し、個々の患者さんに適した検査を選択することで、より正確な診断が可能です。

心電図検査

短時間で心臓のリズムを確認できる基本的な検査です。病院内で受ける場合が多く、不整脈が起きているか、またその種類を判断するのに役立ちます。

ホルター心電図

24時間心電図を装着し、日常生活での心拍リズムを長時間にわたり観察する方法です。間欠的に発生する不整脈を確認するために使用されます。

運動負荷心電図

運動を行いながら心拍数を上げ、不整脈が発生するかを確認します。特に運動時にのみ不整脈が発生する患者には重要な検査です。

心臓超音波検査

心臓の形態や血流を観察し、不整脈の原因となる構造的な異常を特定します。心筋の動きや心臓弁の状態も確認できるため、心臓全体の健康状態を把握するのに役立ちます。

血液検査

血中の電解質バランスや甲状腺ホルモン、その他の内分泌機能を確認し、不整脈の原因を探るために行います。

不整脈の治療方法

不整脈の治療は、発生している不整脈の種類や原因、症状の有無によって異なります。以下は代表的な治療法です。

薬物療法

抗不整脈薬やβブロッカー、カルシウムチャネルブロッカーなどが用いられ、心臓のリズムを安定させる効果があります。症状が軽度の場合には薬物療法のみで対応することが多いです。

外科的処置

カテーテルアブレーション

心臓内の異常な電気信号を発生させる部分をカテーテルを使って焼灼し、不整脈の原因を物理的に除去します。成功率が高く、再発防止にも効果的です。

ペースメーカー植込み

心拍が遅い場合(徐脈)に、一定のリズムで心臓を刺激するペースメーカーを体内に埋め込みます。これにより安定した心拍数が保たれます。

除細動器植込み

重篤な不整脈である心室細動や心室頻拍が起こるリスクが高い場合、体内に植え込み型除細動器を設置し、致死的な不整脈を防ぎます。

不整脈の予防方法

日常的な生活習慣の改善が、不整脈の予防には非常に重要です。不整脈は特定の原因が明確でない場合もあるため、リスクを減らすための予防策を取り入れることが効果的です。

  1. 規則正しい生活
    毎日の睡眠・食事・活動時間を整え、心臓に無理な負担をかけないようにすることが予防に役立ちます。
  2. 適度な運動
    ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸 素運動が心臓の健康維持に効果的ですが、激しい運動は不整脈を誘発する可能性があるため、医師の指導のもと無理のない範囲で行いましょう。
  3. ストレス管理
    リラクゼーション法や趣味の時間を取り入れ、過度なストレスを避けることが大切です。ストレスは交感神経を過度に刺激し、不整脈を引き起こすことがあります。
  4. 禁煙・節酒
    喫煙は心臓や血管に悪影響を及ぼし、アルコールの過剰摂取も不整脈を悪化させる原因となるため、できるだけ控えましょう。
  5. 十分な睡眠
    睡眠不足は心拍リズムを乱しやすくなるため、安定した睡眠環境を整え、十分な休息を取ることが必要です。

不整脈は放置すると、心不全や脳梗塞などの重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。少しでも異変を感じたら、早めに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。また、定期的に自分の脈拍をチェックし、異常がないか確認することも、早期発見のための有効な方法です。