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むくみ

むくみとは

むくみ(浮腫)は、体内の水分バランスが崩れ、余分な水分が組織間に蓄積した状態を指します。人体の水分は、細胞内液(全体の約2/3)と細胞外液(全体の約1/3)に分かれて存在し、細胞外液はさらに血漿と間質液に分かれます。むくみは、特に間質液に余分な水分がたまることで発生します。一般的に、長時間同じ姿勢を続けた後に足にむくみを感じることがありますが、これが持続的で全身にみられる場合は病気が隠れている可能性があります。

循環器内科で扱うむくみ(浮腫)は、心臓や血管の問題が原因で起こる場合が多く、その背景には心不全や静脈の障害が関与している場合が多いです。このむくみにはいくつかの特徴があり、日常的なむくみと区別する重要なポイントがあります。

むくみの症状と特徴

  • 下肢(足首、ふくらはぎ、足の甲など)に出やすい
    → 特に重力の影響を受ける部位にむくみが現れます。
  • 圧痕性浮腫
    → 指で押すとくぼみができ、しばらく戻らない特徴があります。
  • 両側性のむくみ
    → 心臓や血管が原因の場合、左右両側に均等に現れることが多いです。
  • 夕方に悪化しやすい
    日中の活動や立位による血液循環の滞りで、夕方になると症状が目立つ傾向があります。

注意すべき症状

以下の症状がある場合は、重大な疾患が隠れている可能性があるため、速やかに受診が必要です。

  •  急激な体重増加(1週間で2kg以上)
  • むくみとともに息切れや動悸がある
  • 片側性のむくみ(深部静脈血栓症の可能性)

むくみの主な原因

心不全

心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、血液循環が悪くなることで、余分な水分が組織に蓄積する状態を指します。静脈に血液が滞り、静脈圧が上昇することで、血液中の水分が毛細血管を通じて漏れ出します。それによって、下肢のむくみ、急激な体重増加の他、息切れなどの症状が現れます。

深部静脈血栓症

血栓により静脈の血流が妨げられることで、血液のうっ滞が生じます。この場合、片方だけむくむことが多いです。放置すると、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こす可能性があります。

下肢静脈瘤

静脈の弁が正常に機能せず、血液が逆流して静脈内圧が上昇します。下肢のむくみ、皮膚の変色、静脈が浮き出るなどの症状がみられます。

薬剤性むくみ

カルシウム拮抗薬などの降圧剤による副作用でむくみが生じることがあります。なるべく早めに主治医へ相談しましょう。

 

むくみの検査診断

循環器内科では、むくみの原因を詳細に評価するため、血液検査や画像検査を実施します。これらの検査を適切に組み合わせることで、心血管疾患の診断と治療方針の決定を的確に行うことが可能となります。

血液検査

症状が曖昧な場合、血液検査によって心不全の可能性を高精度で評価できます。

NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)

NT-proBNPは、心臓に負担がかかり心筋がストレスを受けた際に分泌されるホルモン(BNP)の前駆体です。特に心不全の診断や重症度評価に非常に有用です。NT-proBNPが高い値を示す場合、心不全や左心室の機能低下が疑われます。

NT-proBNPの値が高ければ高いほど、心不全の重症度が高い可能性があります。治療によってNT-proBNP値が低下すれば、治療が効果的であることを示します。

画像検査

心臓超音波検査(心エコー検査)

息切れ、胸痛、不整脈、動悸、むくみなどの症状がある場合に実施されます。心臓の構造や機能をリアルタイムで画像化し、心臓が適切に血液を送り出しているか、弁や壁の異常がないかを評価します。

主な評価項目
  1. 左室駆出率(EF値)

    左心室がどれだけ効率よく血液を送り出しているかを示します。低下している場合は心不全の可能性があります。

  2. 心臓弁の評価

    弁膜症(逆流や狭窄)の有無を調べます。

  3. 心室壁の厚さと動き

    心筋肥大や運動障害(心筋梗塞後など)を確認します。

  4. 心包液の有無

    心臓周囲に液体がたまる心膜炎や心タンポナーデの可能性を調べます。---

下肢静脈エコー

足の腫れや痛み、赤み、熱感がある場合に、深部静脈血栓症を疑って実施されます。特に肺血栓塞栓症のリスクがある患者に重要です。下肢の静脈内に血栓(深部静脈血栓症:DVT)が存在するか、静脈の弁や血流状態を確認します。

主な評価項目
  1. 血栓の有無

    血栓が静脈内に存在すると、血液の流れが妨げられ、浮腫や痛みを引き起こします。

  2. 静脈弁の機能

    静脈瘤や慢性静脈不全では、静脈の逆流を検出できます。

  3. 血流速度

    超音波ドップラーを用いて血流の方向や速度を確認します。

胸部レントゲン検査

胸部レントゲンは、心臓や肺の形態異常や疾患を確認するための簡便で非侵襲的な検査です。息切れ、咳、胸痛、発熱、呼吸困難などの症状がある場合に実施されます。

主な評価項目
  1.  心臓の大きさ(心胸比)
    心臓が拡大している場合、心不全や心筋症の可能性があります。
  2. 肺の状態
    肺うっ血や肺水腫、感染症(肺炎や結核)などを確認します。
  3. 大血管の異常
    大動脈瘤や大動脈解離の可能性を示唆する影がないかを評価します。
  4. 胸水の有無
    胸腔内に液体が溜まっている場合、心不全や感染症、がんの可能性が考えられます。

むくみの治療と予防

むくみの治療は原因に応じて行われます。例えば心不全の場合、利尿薬の使用で余分な水分を排出し、血行改善薬や心臓リハビリテーションの併用を試みます。静脈瘤や血栓症の場合、弾性ストッキングの使用や、抗凝固療法の実施を検討します。

むくみの症状を予防するためには、適切な生活習慣を送ることが大切です。塩分制限や適度な運動を心がけ、むくみのリスクを軽減します。また、長時間の座位や立位を避け、定期的に脚を動かすことが重要です。

むくみは、軽度なものから命に関わる疾患まで多岐にわたる原因があります。特に心不全や深部静脈血栓症が疑われる場合は、放置すると重篤な症状に進行する恐れがあります。心配な症状がある場合は、早めに循環器内科を受診してください。